私たち「大田区の子どもの健康を放射能から守る会」の放射性物質測定チーム「あんしんプロヴィジョン」が、大田区から業務委託を受けて、食品の放射性物質測定室を運営しています! 大田区民は無料で測定できますので、ぜひご活用ください! 詳しくは…大田区放射性物質測定室(ニックネームは小さなお子様でも親しみやすいように「ベクレンジャー」となっております!)

食品中の放射性物質新基準値について

食品中の放射性物質の新基準値 食品中の放射性物質について、食品衛生法上の基準値がとりまとめられ、平成24年4月1日から施行されました。

私達消費者も、しっかり理解しておくことが重要です。
なるべく分かりやすくまとめましたので是非勉強してください。

まずはどのようになったのか

新基準値 ◆暫定基準値→新基準値(単位はBq/kg)
【飲料水】
…200Bq→10Bq
【牛乳/乳製品】
…200Bq→50Bq
【野菜類/穀類/肉/卵/魚/その他】
…500Bq→100Bq
【乳児用食品】(新設)
…50Bq

注意:妊婦食という定義がありません。
注意:米、牛肉、大豆については経過措置がある。
(詳細は下記「米、牛肉、大豆について経過措置を設ける理由は?」を参照)

新基準は何を参考にしたか

◆厚生労働省「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件等に関する意見の募集について寄せられた御意見について」より。
 食品の国際基準を策定するFAOとWHOの合同会議であるコーデックス委員会が放射性物質に関するガイドラインにおいて、汚染地域からの食品の占有率という考え方を取り入れていることを踏まえることとしました。
新基準値は何を参考にしたか

基本的な考え
(厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長)

◆一般食品の基準値を100ベクレル/kgとした根拠は?

乳児の新基準値 一般食品の基準値を計算する際、年齢などの違いによる影響をきめ細やかに評価するため年齢や男女別妊婦など10区分に分け年齢区分別の食品摂取量や代謝等を考慮した線量係数を用いて1年間の摂取で介入線量レベルに相当することとなる食品1kg当たりの放射能の濃度を算出した。

 流通する食品の汚染割合についてはコーデックス委員会が汚染地域からの食品の占有率という考え方を採用していることを踏まえ我が国の食料自給率(平成22年度はカロリーベースで39%、平成32年度までに50%を目標)等との関係から流通食品の半分が汚染されているという安全側の想定に立っている。

 その上で各区分の限度値の中で最も厳しい13〜18歳男性の120Bq/kgを安全側に切り下げた100Bq/kgを、全年齢区分の一般食品の基準値として適用することで乳幼児をはじめすべての世代に配慮したものとなっている。


◆飲料水の基準値を10Bq/kgとした根拠は?
飲料水の新基準値

 飲料水については、
[1]すべての人が摂取し代替がきかずその摂取量が大きいこと。
[2]WHOが飲料水中の放射性物質のガイダンスレベルを示していること。
[3]水道水中の放射性物質は厳格な管理が可能であること。

これらを踏まえ独立した区分とし飲料水の基準値はWHOのガイダンスレベルと同じ10ベクレル/kgを採用している。


◆牛乳及び乳児用食品の基準値を50ベクレル/kgとした根拠は?
牛乳乳製品の新基準値

 食品安全委員会が食品健康影響評価において「小児の期間については感受性が成人より高い可能性」があると指摘していることを踏まえて合理的に可能な範囲で消費者にも分かりやすい形で明示的に小児への配慮を行う方法を検討し乳児が食べる「乳児用食品」と子どもでの摂取量が顕著に多い「牛乳」を特別な区分に設定することとした。

 この2つの食品区分の基準値の計算に際しては流通する食品のほとんどが国産であるという実態を考慮して万が一すべての食品が基準値上限の値で汚染されていたとしても影響がないよう基準値を計算した。

 これにより「乳児用食品」と「牛乳」の基準値は「一般食品」の半分となる50ベクレル/kgに設定した。


◆一般食品を使って離乳食を手作りした場合その材料は100Bq/kgが基準値となるが、手作りの離乳食よりも市販のベビーフードの方が安全か?
離乳食新基準値

 一般食品の基準値を計算する際には乳児を含めて年齢や男女別妊婦など10区分に分け各区分別の食品摂取量や代謝等が考慮された線量係数を用い一般食品の50%が汚染されていると仮定して計算している。

 各区分の中で最も厳しい値を安全側に切り下げた100Bq/kgを全区分の基準値として適用している。

 乳幼児をはじめすべての世代に配慮したものとなっているので仮に乳児が一般食品を食べ続けた場合もその安全性は確保される。

 乳児用食品の基準値については乳児だけが食べる食品について特に配慮し設定したもの。前述のとおり一般食品の基準値でも乳児への安全性は十分確保されている。


◆米、牛肉、大豆について経過措置を設ける理由は?

 モニタリング検査やばく露推計等の結果からは現在の暫定規制値に適合する食品については安全性は確保されていると考えられることから新しい基準値への移行に際しては市場(流通)に混乱が起きないよう準備期間が必要と考えられる。

 経過措置の対象食品の選定に当たってはそれらを原料として製造/加工が行える期限を含めて流通や消費の実態について農林水産省と協議を行い必要最小限の食品及び期間に限定している。

 この結果米と大豆は1年1作の農作物であり収穫後一定期間をかけて流通し消費されるという特性を有しており、暫定規制値を前提に生産/検査が行われた平成23年産が広く流通していることから平成24年産の流通が開始されるまでの期間を踏まえそれぞれ6か月と9か月の経過措置を置くこととした。

 また牛肉については冷凍牛肉の賞味期限は約2年間あり4月1日以前にと畜された牛肉の在庫の残存率が十分に低くなるには6か月を要すること。

 また牛へ給餌する飼料を新基準値に対応したものに切り替え飼い直したとしても生物学的半減期から新基準値を下回るためには6か月を要する可能性があることを踏まえ6か月の経過措置を置くこととした。 新基準値への円滑な移行のためにも暫定規制値に適合している食品の安全性に加えこれらの食品が経過措置の対象となった理由とその安全性について消費者及び生産者の双方に対して引き続き丁寧に説明周知を行っていく。
新基準経過措置とは


◆介入線量レベルを年間1ミリSvに設定した理由は?

 コーデックス委員会が食品の介入免除レベル(特段の措置をとる必要がないと考えられているレベル)として年間1ミリSvを採用したガイドラインを提示していることやモニタリング検査の結果で多くの食品からの検出濃度は時間の経過とともに相当程度低下傾向にあることを踏まえ食料供給などに影響がない範囲内で合理的に達成可能な範囲でできる限り低い水準に線量を管理するALARA(As Low As Reasonably Achievable)の考え方に基づき食品中に含まれる放射性物質の介入線量レベルを年間1ミリSvと設定。


◆食品の汚染割合を50%とした根拠は?

 流通食品の汚染割合についてコーデックス委員会で定められている放射性物質に関するガイドラインではすべての食品が汚染されていると仮定せず代わりに占有率(汚染国からの輸入される食品の割合)という考え方が取り入れられていることからこれを採用。

「一般食品」では我が国の食料自給率(平成22年度はカロリーベースで39%、平成32年度までに50%を目標)等との関係から流通する食品の半分が汚染されているという安全側の想定の下に基準値を設定している。


◆放射性セシウム以外の核種の基準値は設けないのか?

 事故後の長期的な状況に対応するものであることから比較的半減期が長く長期的な影響を考慮する必要がある核種を対象としている。

 具体的には原子力安全/保安院の評価に基づき大気中に放出されたと考えられる核種のうち半減期が1年以上の核種すべて(セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム、ルテニウム106)とした。

 規制対象の核種のうちセシウム以外の核種については測定に非常に時間がかかることから移行経路ごとに放射性セシウムとの比率を算出し合計して年間1ミリSvを超えないように放射性セシウムの基準値を設定している。

 放射性セシウムとの比率の計算は穀類/乳製品といった食品分類ごとに行っており放射性物質の移行に関する食品ごとの特性も考慮している。

政府も何かと参考にしている国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方は?

ICRPの考え方
食品中の放射性物質に係わる新たな規格に対して文科省の放射線審議会がまとめた答申案でも「1.防護の最適化及びステークホルダーの意見の考慮について」と題された節において「事故の影響を受けた地域社会の適正な社会経済活動を維持し復興するためステークホルダー(様々な観点から関係を有する者)等の意見を最大限に考慮すべきであると考える」と述べる上で、ICRPの文書は引用されています。

最適化の原則(ICRPpub111より)
・最適化とは現場の一般的状況において最善が尽くされているかどうか及び線量を低減するために合理的なことがすべて為されているかを常に問い直す考え方である。

・当局が実施する防護方策の優先事項は、被ばくが最も大きい人々を防護することと並行して、当該事象に伴うあらゆる個人被ばくを合理的に達成可能な限り低減することである。

・さまざまな利害を考慮して汚染食品を取り扱うことは複雑ではあるが、参考レベルを満たすように防護方策を策定すべき。生産、流通、加工、ならびに消費者に情報を伝えて適切な選択を行えるよう講じられる措置を含む。

・内部被ばくの評価は住民が現地生産品の測定結果を入手できることを前提とし通常他の食品よりも汚染されている食品を特定。住民は汚染された食料品の摂取量を減らすために食生活を適応させることができる。

・最適化された防護とは被ばくがもたらす害と経済的、社会的要素とのバランスを注意深く評価した結果得られるものである。したがって最適な選択肢とは必ずしも個人に関する残留線量レベルを最も低くするものとは限らない。

・参考レベルを上回ったままになる可能性のある個人被ばくを低下させることに特に留意すべき。ただし参考レベルを下回る被ばくを無視してはならず最適化されているかさらなる防護措置が必要かどうか評価を行うべき。

※乳児用食品に対してより厳しい基準をもつことについての考え方として、「より感受性が高いあるいは特別に防護されることがふさわしいと見なされる住民グループ (例えば小児/妊婦もしくは授乳中の母親/健康の優れない人々) には一定種類の汚染レベルの高い食品の消費を避けたり減らしたりするよう助言するとよい」とも述べられています。

※助言に留まらず小児や妊婦/授乳中の母親/健康の優れない人々が汚染レベルの高い食品の消費を自動的に避けられるための制度が合理的に設計できるのであればそれがより望ましいことは言うまでもありません。

チェルノブイリ原発事故と比べて

チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシでは以下の通りです。

【飲料水】
 10Bq(日本も10Bq)

【パン】
 40Bq(日本ではパンは一般食品なので100Bq)

【ジャガイモ】
 80Bq(同上。日本では一般食品なので100Bq)

【牛乳、乳製品】
100Bq(日本は50Bq)

ベラルーシは事故から徐々に基準を厳しくして現在の数値になっています。

最後に

◆今回の新基準値が安全かどうかは個人の判断によると思います。
できるだけ被ばくを抑えることが重要であることはご存知の通りです。
このため、この新基準=安心と考えるのではなく、個人個人が真剣に考えて自分の基準を作って対策をするこが重要です。

◆注意したいのは、この新基準が適用されて検査されたものがいつから市場に出回るかです。
特に、米/牛肉/大豆については経過措置があり、例えば冷凍牛肉の賞味期限は約2年間であり、4月1日以前にと畜された牛肉の在庫の残存率が十分に低くなるには6か月を要するとされていますが、果たして6ヵ月以降は本当に市場に出回るものが新基準値に適応しているのか疑問が残ります。

◆個人年間実効残留線量の参考レベルを 1ミリSvと置くのであれば外部被ばくと内部被ばくの総計と考えるべきであり、食品 (飲料含む) のみでなく空間線量や空中に浮遊する放射性物質を吸入する場合についても考慮する必要があるのではないかと思います。
ただし大田区の空間線量はそれほど高くないことから考えて、以前よりイベント等でお伝えしている通り飲食や吸入による内部被ばくを特に注意していけば良いのかもしれません。